黄金株とは、正式には「拒否権付種類株式」と言います。
通常、会社が発行している株式は普通株式と呼ばれるもので、株式の権利(内容)は株主ごとに変わりありませんが、定款に定めることによって、株式の権利(内容)が異なる株式を発行することができます。
黄金株(拒否権付種類株式)を1株でも持っていれば、株主総会で決議された事項について拒否権を持っていることになりますので、普通株式を保有する大株主以上の影響力を持つことになります。

事業承継において、相続対策として後継者に多くの株式を移動させて、現経営者が黄金株(拒否権付種類株式)が持つことで、経営者として経験の浅い後継者に全てを託すのが不安だったり、後継者が現経営者の意にそぐわない経営判断を下したときに、拒否権を発動する考え方もあります。
しかし、事業承継での黄金株(拒否権付種類株式)の活用はお勧めできません。
理由は、次のとおり、2点あります。

①後継者が思うように力が発揮できない

後継者だけでなく従業員が、黄金株(拒否権付種類株式)を保有している元経営者の顔色をうかがい、組織の中で2重権力となり、後継者が経営者として力を充分に発揮できなくなるばかりか、デットロック状態になり企業が衰退していく可能性があります。

②遺産相続で後継者以外に相続される可能性がある

いずれは後継者に渡るはずの黄金株(拒否権付種類株式)が、相続などで後継者以外の人に渡る可能性があります。この場合も中小企業のメリットである所有と経営の一致している状態でないので、スピードのある経営判断がくだせずに経営力が低下していく可能性があります。

 

また、事業承継税制を活用を考えている場合は、後継者以外が黄金株(拒否権付種類株式)を保有していると事業承継税制を利用できなくなってしまいます。

そもそも、黄金株(拒否権付種類株式)の導入は、事業承継だけでなく通常の場合状態でも意図しないトラブルに発展する可能性があるので慎重な判断が求められます。