近年、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会問題として注目されています。特に中小企業では、限られた人員の中で適切な対応が求められます。しかし、カスハラ対策を検討する際に「クレームとカスハラの違いが分かりにくい」という声も少なくありません。本記事では、クレームとカスハラの違いを明確にし、適切な対応策を考えるポイントを解説します。
クレームとは?
クレームは、商品やサービスに対する正当な苦情・要望を指します。多くの場合、顧客は問題を解決し、より良いサービスを受けることを目的としています。
具体例
1.商品不良の申し出
・「購入した電気ポットが1週間で壊れた。交換してもらえますか?」
2.サービスに関する指摘
・「予約していた時間にスタッフが来なかった。どういう対応をしてくれますか?」
3.接客態度への改善要望
・「店員の対応が不親切だった。もう少し丁寧に説明してほしい」
➡ ポイント:クレームは企業側のミスや改善点を指摘し、冷静な話し合いが可能なケースが多いです。
カスハラとは?
カスハラは、顧客の立場を悪用し、企業や従業員に対して過剰な要求や威圧的な言動を行う行為です。これは、正当なクレームとは異なり、従業員の精神的負担を増大させ、業務の妨げとなります。
具体例
1.過度な補償要求
・「食事が少し冷めていた!慰謝料として1万円払え!」
2.土下座や謝罪の強要
・「責任者を連れてこい!納得するまで謝らせるぞ!」
3.長時間のクレーム・執拗な要求
・「解決策を提示しても納得せず、何時間も店に居座る」
4.従業員への人格否定・威圧
・「お前みたいなやつは仕事を辞めたほうがいい!」
➡ ポイント:カスハラは、問題解決よりも従業員への攻撃が目的になっている場合が多く、企業側がすべて対応する必要はありません。
クレームとカスハラの境界線
クレームとカスハラの違いを判断するために、以下の3つの視点で考えましょう。
1.要求が合理的か?
✅ 「購入した商品が破損していたので交換してほしい」→ クレーム
❌ 「少し汚れていたから、タダにしろ!」→ カスハラ
2.言動が適切か?
✅ 「この対応には納得できないので説明をお願いします」→ クレーム
❌ 「ふざけるな!お前みたいなやつが対応するな!」→ カスハラ
3.問題解決を求めているか?
✅ 「改善策を提示してほしい」→ クレーム
❌ 「責任者を出せ!土下座しろ!」→ カスハラ
中小企業のためのカスハラ対策
① 社内ルールを明確にする
・クレーム対応のマニュアルを作成
・「どこまで対応し、どこから拒否するか」を明確に
・記録を残し、必要に応じて弁護士や警察と連携
② スタッフのメンタルケア
・カスハラを受けた際の相談窓口を設ける
・感情的にならず、冷静に対応する研修を実施
③ カスハラを毅然と拒否する
・暴言・脅迫・長時間拘束には「対応を打ち切る」選択を持つ
・「お客様だから何でも受け入れる」の考えを捨てる
まとめ
クレームは、企業にとってサービス改善の貴重な機会となります。一方、カスハラは従業員を守るために毅然とした対応が必要です。
「クレームは誠実に対応するが、カスハラには断固とした態度をとる」
この姿勢を社内に浸透させることで、より良い顧客対応と従業員の働きやすい環境の両立が可能になります。中小企業だからこそ、適切なルールを整え、クレームとカスハラを正しく区別し、対策を講じていきましょう。