私は、東村山・所沢地区を拠点に東京都・埼玉県・長野県を中心に活動する中小企業診断士・事業承継士の羽田巧(はた たくみ)です。
今回は、親族内事業承継を成功に導くための7つのテーマの3つ目の「相続について考える」です。
事業承継で考える相続のポイントは、後継者が経験権を維持し、経営者として能力を発揮できるよ環境をつくることです。
そのために、株式、事業用資産、納税資金から、後継者以外の相続人に考慮した相続を行う必要があります。
家系図を作ることが相続対策の第一歩
相続対策を考えるうえで最初にやることは、家系図を作成することです。
相続対策は、税理士などの専門化と相談して進めていくことになります。
自分の相続資産が誰に渡るのか、自分の頭の中で分かっているだけでなく、専門家に説明をすることになります。
家系図を作成して、相続人を明確にすることによって、スムーズな遺産相続計画が立てやすくなるのです。
相続資産の分割には遺留分に注意する
遺留分とは、相続人に認められる最低限の権利のことです。
遺産相続をするときには、法定相続人が法定相続分に従って遺産を受け継ぐのが基本です。
しかし、後継者が安定的に事業ように行う土台をつくるためには株式、不動産など事業に係る資産を後継者に移転する必要があります。
後継者以外の相続人に対して、最低限の相続財産が行き渡るようにすることが求められます。
遺言書を作成する
経営者の身に万が一のことが起こった場合に備えて遺言書を作成しておくことが経営者の責務であると思います。
計画的に事業承継を進めても、遺言書が無かったばかりに相続が争族になってしまい、遺産分割争いが起こってしまっては元も子もないからです。
遺言書の種類
よく利用される遺言書の種類として、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
事業承継の場面においては、トラブルがないように後継者に事業資産が相続されることが望まれます。
遺言の要件不備により効力が認められない危険性や、紛失、偽造といった可能性もありますので、経営者の遺言書は公正証書遺言が求められます。
①自筆証書遺言
遺言者が自ら遺言の全文を自書し署名押印するもので、いつでも簡単に作成できる方式です。メリットとして、費用もかかりませんし第三者に内容を知られることもありません。しかし、デメリットとして遺言の要件不備により効力が認められない危険性や、紛失、偽造といった可能性もありますので、遺言者ご自身が細心の注意を払って作成・保管する必要があります。
②公正証書遺言
公証人に遺言したい内容を伝え、それをもとに公証人に遺言を作成・保管してもらう方法です。デメリットととして費用がかかりますが、メリットとして公証人にチェックをしてもらえますので要件不備の心配はありません。また、公証役場に保管されますから、紛失、偽造の心配もありません。
後継者以外の相続人が納得する遺産分割に留意する
遺言書を作成する際の留意点として、後継者以外の相続人に対して納得感の得られる遺言者にすることです。
後継者にとって、事業を引き継いたら事業に専念し、経営者として成長していくかに集中すべきであり、身内の争族に神経を使っている場合ではないからです。
遺留分を侵害してしまい「遺留分減殺請求」されないように留意すること、また、生前に退職金を可能な限り貰うようにすることで、後継者以外の親族への相続財産を捻出するようにします。
生前贈与を活用する
相続でなく生前に相続財産を相続人に対して引き継ぐ時に考慮するのが贈与税です。
この贈与税は、暦年課税と相続時精算課税がありますが、相続時精算課税を1度選択したら暦年課税に戻すことができないので、充分に検討してからどちらの制度にするか決める必要があります。
ここでは、簡単に2つの贈与税の仕組みを説明します。詳しくは税理士など専門家に確認してください。
暦年課税
1年間(その年の1月1日から12月31日まで)に譲り受けた財産の合計価格が110万円を超えていた場合に課税するものです。
相続時精算課税
相続時精算課税制度」は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。
この制度には2,500万円の特別控除があり、2,500万円までの贈与には贈与税がかからないことになります。
事業承継税制を活用する
中小企業の後継者が、現経営者から会社の株式を承継すら場合に適用される贈与税・相続税を猶予または免除してくれる制度です。
平成30年4月1日から事業承継税制が大きく変わり、使いやすくなっています。
平成30年度事業承継税制の改正の概要 ←中小企業庁ホームページ
この制度の適用を受けるためには、以下の2点を満たしていることが必要です。
(1)平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。
(2)平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。
経営承継円滑化法による金融支援を検討する
納税資金が不足している場合などで、事業承継時に経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を条件に、公的な金融支援を受けることもあります。