私は、東村山・所沢地区を拠点に東京都・埼玉県・長野県を中心に活動する中小企業診断士・事業承継士の羽田巧(はた たくみ)です。
今回は、親族内事業承継を成功に導くための7つのテーマの5つ目の「業務ノウハウを引き継ぐ」です。
ここでのポイントは、経営者が交代することによって、現経営者が築きあげてきたものが失われては会社にとって大きな損失となります。
そこで、営業スタイルや経営の方針など、業務の運営ノウハウを後継者に伝授していくことを目指します。
既存の従業員の実績を引き継ぐ
従業員にとって経営者が代わるということは、今まで慣れ親しんだ労働環境が大きく変わる可能性があるので大きなインパクトになります。
経営者の親から子への代替わりは、経営者への昇格の理由が従業員の立場からしてみれば、経営者の親族というだけにすぎません。
後継者が会社の中で実績を残してきたのならば、従業員にとって納得感があるのですが、自分よりも実績がないのにも関わらず、経営者の親族というだけで自分よりも会社の中で地位が上になるのは、心の中では複雑な思いになる方が多いのも事実です。現経営者の下では有能な従業員だったのに、後継者へのバトンタッチが行われた途端に、後継者がコントロールをしにくい反乱分子になりかねないのです。このようになる大きな要因として、後継者の従業員に対する配慮が欠けている場合です。このような事態を防ぐためにも、既存の従業員の評価方法や評価基準、役職者のこれまでの実績や能力を確認し、個々の従業員の強みを把握して後継者に伝えることです。そうすることで、後継者が従業員への尊敬心を抱き、良好な関係を築けるのです。
金融機関との付き合い方を引き継ぐ
取引のある金融機関に対して、事業承継スケジュールを伝え、後継者を紹介し、これまで以上のサポートが受けられるように関係性を強化することです。
資金面で困った時だけに金融機関を頼るのではなく、日常的に金融機関と接して情報交換を行うことで、経営上のアドバイスをタイムリーに受けることもできるのです。
後継者が一人で金融機関に訪問し、財務情報や事業計画を説明できるようにして金融機関から経営者としての信頼を得られるようにしておく必要があります。
取引先や仕入先などの人脈を引き継ぐ
取引先や仕入先との人脈は、現経営者が長い時間とエネルギーを使って培ってきた場合も多く見受けられます。
経営者が交代することで、その人脈が失われては現経営者が今まで築きあげてきたものが失ってしまえば、会社にとって大きな損失です。
取引先や仕入先についても金融機関と同様に、しっかりと人脈を引き継いでいかなければなりません。
技術ノウハウを引き継ぐ
技術ノウハウを他人に伝授するのには多くの時間を要する場合があります。経営者が保有している技術ノウハウを洗い出して、計画的に後継者や従業員に技術ノウハウを移転させる必要があります。
ITなどの方法で代替えが可能であり、会社の強みが失われてないのであれば、積極的にITなどへの移行も検討してみるのも良いでしょう。ITへ移行することで生産性が向上し、結果的に組織力が強化される場合もあります。